メランコリックを抱いて by 山崎凛-華やかさの中に見える憂鬱

その人らしさとは何だろうか?

人が他人を判断するとき、ついついその人の外見や容姿、それに表面的な態度で想像されるイメージで相手を判断してしまいがちだ。

だが、それがその人の本質を正確に捉えた判断だといえるかは疑わしい。

山崎凛さんの漫画、「メランコリックを抱いて」を読むと、最初に目に入って来るのは、そのオシャレな絵柄や抑え目なトーンで統一された優れた色彩感覚、そして画面全体を構成する美意識の高さだ。

しかし、この漫画の本質は表面的な華やかさではない。

メランコリック=物思いに沈むさま、憂鬱であるさま。
この漫画のタイトルにも入っているメランコリック(憂鬱)。

今回はこの憂鬱をキーワードに僕なりの解釈でこの作品の本質に迫ってみたいと思う。

華やかさの中のメランコリック

この漫画の主人公はモデルの様な容姿で、仕事でも評価され、パートナーもいた事が2話目の中で描かれている。

そこから推測されるのは、もともと主人公はかなり華やいだ生活を送っていた人物だということだ。

しかし、一話目の彼女の現在の生活は、過去の生活とはだいぶ違ったものになっている。

会社を辞め、人目を避け、出来るだけ引きこもった生活をしている。

なぜ、華やいだ生活を送っていた主人公が現在の様な生活を送るようになったのか、それはまだ詳しく明かされてはいないが、作中で時々過去の出来事が描写される場面がある。

その過去の描写から、他人からの評価やパートナー(だと推測される)との問題で主人公が自らの心に何らかの傷を負った事がうかがえる。

外側の自分と内側の自分

人は他人を外見や容姿、態度など外側のイメージで判断してしまいがちだが、外側のイメージでは測れない内面を他人は持っているものだ。

例えば、他人に頼らず、一人で何でも出来てしまう人がいる。

そんな人を見て他人は強い人だと思うかもしれない。

しかし、本人からしてみれば、他人に頼りたいけど、頼る事が苦手なだけで、頼れない自分に悩んでいるかもしれない。

また、頼れないだけでなく、人によっては他人に頼る事に本人でも良く分からない罪悪感すら感じてしまう人もいる。

そのような個人の内面の葛藤などは、大体において他人には見えない事が多い。

そこから誤解が生まれ、関係性が上手くいかなくなってしまうケースもある事だろう。
この漫画の主人公の抱えるメランコリックも、原因はそのあたりにあるのではないかと推測する。
一見すると華やいで見えた主人公の過去の生活も、本質は空々しい価値観の中で成り立っていたのかもしれない。

画面に表れる美意識

この漫画の画面全体を通して感じられるのは、作者の高い美意識だ。

色彩や人物の線、吹き出しの形などにも強いこだわりとセンスが感じられる。

中でも、私が注目したのは、装飾品や主人公の住む部屋の家具など全てにおいて、それを徹底している所だ。

この高い美意識で作られた画面がこの作品の魅力の一つになっている事は間違いないが、ただキレイな魅力的な画面という以上の効果と必然性がそこにはあるように思う。

この物語では、外見の美しさ、華やかさ、そして内面の価値や、心などがキーワードになっていると思うのだが、高い美意識によって構成された画面があればこそ、よりこの漫画で表そうとしている、目には見えない心の問題が対比されて表れてくるのではないだろうか。

そういった視点で眺めてみると、この画面の持つ意味がより一層深く感じられると思う。

花屋の存在

忘れてはいけないのが、花、そして花屋の存在だ。

一話めから登場して、少しだけ主人公の心を柔らかくしてくれる存在であり、おそらくこの漫画のキーマンなのだと思われる花屋さん。

一話目で主人公と花屋の男性が話す会話がとても印象的で、外見と内面、本質の価値について短い会話でとても上手く語られている。

この二人の関係性によって、物語がどう動きだしていくのか、主人公のメランコリックな状態がどう変わっていくのか、今後の展開を待ちたいと思う。

三話目から主人公と花屋だけでなく、もう一人「綾子」という人物が出て来る。

この人物の登場によって、物語は少しづつ動き出す、そして物語は続く。
(この記事を書いている時点で、1~3話まで物語は更新されている。)

まとめ

心の問題を扱っている漫画や作品は多数あるが、この漫画はその中でも引きつけられる作品だ。

なぜこの漫画に引きつけられるかというと、誤解を招くかもしれないが、あえて言うならそれは、この漫画のバランスの良さにあると思う。

「メランコリックを抱いて」という題名からも分かるように、決して明るい話を題材にしている訳では無いが、この漫画を読んでいて、凄く暗い気持ちになったりはしない。

絵柄の華やかさや、構成の上手さによって、読んでいても暗く重くなり過ぎず、かといって軽い話になる訳でもなく、本質的なモノが十分感じられる。

そういったバランスの良さだ。

決して平均的という意味でのバランスではない。

このバランスの良さ、そして何よりこの主人公の抱えてる心の問題が、外見や容姿、他人からのイメージ、仕事や世間的な評価と、個人の人生の幸福や心の問題と言う普遍的なテーマを扱っているからこそ、引きつける漫画になっているのだと思う。

これからの更新を心待ちにしつつ、これからもこの主人公の「心」を読んでいきたいと思う。

山崎凛さんとの対談記事

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