
By: Jamie McCaffrey
念願のファミリー漫画を描いた持ち込みで担当が付くも、自分の漫画を見失い、せっかく掴んだチャンスも泡に消えてしまった。
僕はこの時、本当にどん底の気分だった。
自分の人生で初めて、人生の全てを諦めそうになっていた。
しかし、全てを諦めかけていた僕に、自分でも想像さえしていなかった出来事が訪れる。
その出来事があったからこそ、僕は今もう一度マンガを描く事が出来る。
本当に大切なモノ
自分の描きたかった漫画で、連載を目指すも、自分の漫画を見失い、そこでも挫折した僕は本当にどん底の状態だった。
漫画も上手くいかず、同時に、プライベートでも全てが上手くいかない状態になっていた。
当時、全てを漫画家になるために捧げていた僕は、正社員として、どこかの会社で働いていたわけでもなく、普通の生活さえ困難な状況だったのも追い打ちをかけていた。
夢もプライベートも、社会人としての普通の未来さえも全く先が見えない状況が続いていた。
毎日何も希望が持てずに、当時働いていたパート先へと向かう電車に乗っていた。
気が付くと、夢も信念も全て失った、30代一歩手前の抜け殻の男がプラットフォームに立っていた。
漫画が描けなくなった日々
本当にどん底の日々だったが、何とか道を切り拓こうとする気持ちも微かに残ってはいた。
だけど、漫画を描こうとして原稿に向かうと体が硬直するようになっていた。
肩や背中、腰のあたりまでが強烈に凝ったようになる事を覚えている。
プロットを書こうとしても途中まで書いては、けして完成する事はなかった。
完成出来るハズがなかった。
何故なら、当時の僕にはもう大切なモノが何なのか分からなくなっていたからだ。
自分の描きたいものが何なのかさえ分からないのに、物語が作れるハズもない。
好きだったアニメも漫画も、見れなくなった、見るのが凄く辛かった。
夢を失う事、未来が見えない事、そして、自分を信じられなくなる事、それは本当に、本当に辛い事だった。
全てを諦めかけたのは、そんな時だった。
人との出会い
そんな全てを諦めかていた時、大切な人と出会う事になる。
その出会いこそが、僕に本当に大切な事を教えてくれた。
とても個人的でプライベートな話なので、詳細を事細かに書く事はしない。
しかしそれでは、何故僕が大切な事に気付く事が出来たのかが伝わらないと思うので、大事な部分だけを書ける範囲で書きたいと思う。
何もかも失い、プライベートでも多くの人が僕の周りから離れていった。
落ち目になると、他人は離れていくものらしいと、この時知った。
そんな時でも、最後まで僕の傍に居てくれて勇気付けてくれた人が居た。
その人は、全てを見失い、何も無くなった状態の僕をそのまま受け入れ肯定してくれた。
「何も無くてもいい、あなたがあなたらしく生きてくれればそれでいい」
僕は後にも先にも、これ以上僕を勇気づけてくれた言葉を知らない。
自然と涙が流れた。
生まれてきて、一番嬉しかった。
本当に何もない状態だった、そんな僕を、僕自身でさえ肯定出来ずに、諦めそうになっていた僕を無条件で肯定してくれたのだ。
それがどんなに嬉しかったか、どんなに暖かい気持ちになれたか、文章ではとても表す事はできない。
この出会いによって、僕はもう一度立ち上がる事が出来た。
この後、すぐに全てが回復したわけでは無いが、少しづつ、少しづつ、僕は大切な事を噛み締めるように前へ進みだす事になる。
何のために漫画を描くのか
大切な人との出会いによって、僕は少しづつ回復する事が出来た。
そのうちに、僕のなかで「もう一度、漫画を描きたい!」という思いが生まれて来た。
それは純粋に、僕が描いた漫画を大切な人に読んで貰いたいと思ったからだ。
それは、売れるために無理やり流行を取り入れたり、出版社からデビューするために、自分の信念とは違う事まで受け入れて漫画を描く事とは本質的に違う行動になっていた。
もっと、大きな視点と、もっと自由な広がりがそこにはあった。
自分が本当に面白いと自信を持って言えるモノを、大切な人に読んで貰いたい、伝わってほしい。
そう心から思えるようになった。
何のために漫画を描くのか?僕は多分、これから先、大切なものを見失う事は無いだろう。
どん底から回復した僕には、本当に大切なモノがちゃんと分かっていた。
こうして僕は、もう一度漫画を描く事が出来るようになったのだ。
まとめ・あとがき
僕は漫画を描くとき大事にしている事がある。
それは、「本当に伝えたい一人に向けて漫画を描く」こと。
それと、「自分が本当に良いと思ったモノを信じて描く」こと。
この二つだ。
この記事の最初(前編)に僕はこう書いた。
この二つの答えに僕がたどり着くまでの個人的な話を書いてみた。
ここまで読んでくれた方が、どう思うかはそれぞれの判断に委ねたいと思う。
漫画制作に決まった正解がある訳では無いと思うし、それは一人一人の中に答えがあるものだと思うからだ。
それでも、この僕の個人的な経験が、制作に悩む誰かの役にたってくれたら幸いだと思う。
最後に、あなたにとって漫画を描くとき大事な事は何ですか?
【関連記事】「お天気ひよりちゃん」一話を描いて…。