僕が漫画を描くとき大事にしている事(前編)

僕は漫画を描くとき大事にしている事がある。

それは、「本当に伝えたい一人に向けて漫画を描く」こと。

それと、「自分が本当に良いと思ったモノを信じて描く」こと。

この二つだ。

僕も、最初からそう思っていた訳では無い。

最初の頃は、売れたいとか、デビューしたいとか、斬新な設定とか技術とか、そんな諸々の事を大事にして漫画を描いていた時もあった。

だけど、色々な事を経験してきて、今は心からそう思うようになった。

今回はそこに至るまでの少し個人的な事を書いてみようと思う。

挫折ばかりしていた過去

僕は子どもの頃から絵が得意だった。

クラスに一人はいる絵の上手い子供、今思えばそんな感じの子どもだったと思う。

絵を描けば周りの大人や友達から褒めて貰えた、そしてそのまま絵を描く事が好きになり、高校生になる頃から、絵を描く事を仕事にしたいと思うようになった。

この頃までは挫折という挫折は無い生活だったといえる。

しかし、ここから僕の挫折の連続が続くことになる。

大学受験でのちょっとした挫折

そして、大学は美術大学を目指して受験するも、不合格、その後、三浪してどうにかこうにか美術系の学科がある大学に受かるも、結局自分の本当に行きたかった大学には行けなかった。

大学受験で三浪した事も、僕にとってはちょっとした挫折経験だった。

そして三浪もしたにも関わらず、結局自分の本当に入りたかった大学には受からなかったのも、ちょっとした挫折経験になった。

漫画を描き始めるのは大学入学後、大学三年生になって初めて本格的に漫画を描き始める。

挫折の連続だった漫画持ち込み体験

大学を卒業して、半年ほど経った頃に初めて出版社に漫画の持ち込みをする事になる。

最初に持ち込みした作品は、お世辞にも素晴らしい出来だったとは言えないが、そのとき漫画を見て貰った編集さんからは「初めてにしては良いんじゃない」「新人賞に出せば佳作か、努力賞位は貰えるかもしれない」と最初にしては良い反応を貰えた。

しかし、その後が大変だった。

最初の持ち込みを終え、ある程度手応えを感じたつもりになっていた僕は、次の持ち込みに向けて原稿を描き始めた。

今度はもっと、雑誌の傾向に合わせたり、売れ線を意識したキャラクターを、自分なりのアレンジを加えて取り入れてみたり、話の作りも色々研究し、自分なりに売れるモノ、デビュー出来そうな漫画を描いたつもりだった。

しかし、僕はこの時、大きなミスをしていたのだ。

それは、本当に自分が良いと思った漫画を描いたわけでは無かった事と、その漫画を本当に伝えたい一人に対して描いたわけでも無かった事だ。

今にして思えば当然の結果かもしれないが、その作品はあまり良い評価は貰えなかった。

多分、今振り返ると、その頃の僕の作品は、流行やセオリーを表面的になぞっただけの、ただの記号のような作品になっていたのかもしれない。

流行もセオリーも大事な事には違いないが、エンターテイメントとして面白い作品を作るには、それだけでは足りないのだと思う。

面白い作品を作るためには、やはり作家の個人的な思いや、生き様が反映されて初めて本当に読者の胸を打つ作品になるのだと、今なら分かる。

その当時は、それがまだ十分に分かっていなかった。

そして、その後が僕の辛く苦しい挫折の連続になる。

焦りと不安とプレッシャーの連続

大学を卒業して一年が過ぎた頃、僕はとてつもない焦りと不安とプレッシャーの中にいた。

未だに思うような結果が出ないで、自分の先が全然見えない状態が続いていたからだ。

大学卒業後、普通に就職している同級生や徐々に評価され始めている作家志望の仲間に比べて、自分が凄くみじめな存在に思えた。

このみじめな状態を抜けるために、早くデビューしたい。

その焦りから、もっと受けそうな流行の作風を狙ったり、自分には合っていない様な、本来なら取捨選択しなければいけない様なアドバイスまでも取り入れるようになってしまっていた。

僕は、どんどん加速度的に自分が本来描きたかったはずの漫画とは違う漫画を描き続けた。

持ち込みにいく度に、漫画の評価は下がっていった。

焦りや不安はピークの状態だったと思うが、僕の中のギリギリの理性的判断が「さすがに、この方向性は間違っているな、僕は冷静に状況を見つめなおして、方向を切り替えないといけない時期だ」と語りかけて来た。

そして、僕はここで一つ正しい決断をする事になる。

次に持ち込みにいく漫画は、自分が本当に描きたかった漫画を描いて持ち込もうと決めたのだ。

中編へ続く

僕が漫画を描くとき大事にしている事(中編)
大学を卒業し、いくつかの出版社に漫画の持ち込みに行くようになった僕だが、その結果は惨憺たるものだった。デビュー出来そうな漫画を描こ...

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